PRAISE FOR HIROMI INAYOSHI

Taishu Segawa

稲吉紘実様にはこの度、目出度くも、作家 生活40年を迎えられ、その作家人生の集大成 ともいえる作品集「HIROMI INAYOSHI CI DESIGN」 Vol.1を刊行されたこと、誠に 同慶に堪えない次第であります。
稲吉様は、グラフィックデザインからCIデザイン、 さらに、パーソナルマーク(象徴芸術)を始め とした芸術創作を多岐に渡る分野で精力的に 活動され、その活躍の場は日本のみならず、 世界を勇躍し、様々な賞を受賞、まさに世界に おけるソーシャルデザインイノベーターの 第一人者ともいえる方です。稲吉様は、今を遡る 20年前に仁和寺の第46世吉田裕信門跡 と親交があり、その門跡のバトンを受け継いで いる私に祝辞のお声が掛かった次第です。

仁和寺は宇多天皇を開山法皇とし、888 (仁和4)年の創建より令和の時代まで、弘法 大師空海を宗祖とする真言宗の法灯を 継承する寺院です。当寺は堂宇の焼失などの 困難がありましたが、時代の変化に対応 しながら、開山宇多法皇より脈々と継承されて いる「祈りの心」とともに今日まで活動を 行っております。さらに、宇多法皇以降、皇族が 歴代門跡に就任することによって、日本史に 於ける重要な人物や文化人と緊密な関係を築き 上げ、特に平安時代の頃には、鎮護国家の 道場としてだけでなく、当代の有名歌人が集い、 度々和歌会が開催されるなど、仁和寺文化 と言われるまでの一大文化サロンを形成するに 至っておりました。
また、江戸時代には、日本芸術の最高峰 とも言える琳派との絆も深く、その中心人物の 陶工である野々村仁清の仁は仁和寺の 門跡により名付けられたものであります。この ような背景をもつ寺院であればこそ、現代 芸術の第一人者である稲吉様の刊行に際し、 言祝ぎを述べる機会が設けられたこと、 感慨に堪えません。琳派の創始者である本阿弥 光悦が「此後とても昔の名作におとらぬ 名人いくらも出申すべし」という言葉を残して いるように、稲吉様には今後のさらなる ご活躍を期待し、日本文化・芸術の発展に寄与 頂き、さらには後進の育成にもご尽瘁 くださることを念じて、作品集に対する祝意と 致します。
世界遺産・総本山仁和寺 第51世門跡
瀬川大秀

Yousaku Kamekura

純度の高い贅沢精神       
稲吉紘実は私にとって、かつて出会ったことも ないタイプのデザイナーである。彼の場合、 デザイナーと限定するには仕事の幅が広すぎる。 彼はクリエイターでもあり、アートディレクター でもある。しかし、このような、幅の広さを持った アートディレクターは日本でも、数人を数える のみだ。私が稲吉のようなタイプに初めて会った と云っているのは、彼の資質についてである。
稲吉と会って話し、彼の仕事の質をみると、 彼の強い嗜好というかテイストが、生まれ持った 資質の、グレードの高い純度を感じさせる のだ。そして、その作業の展開をみると、稲吉の 並々ならぬ洗練された閃きが都会的な感性 のなかに息づいている様に思われた。「日本でも 遂にこういうタイプのデザイナーが誕生した んだ」という実感である。もう、すでにアメリカの 心あるデザイナー達から、アートディレクター の質の低下を指摘し批判する声があがっている。
アメリカのチャールズ・アンダーソンが私に、 「今はもうアメリカではアートディレクターという のは、単なるお金の計算機に過ぎないんだ」 と嘆いていた。この言葉は、やがて日本にあては まる状況が近づきつつある。こんな時代こそ、 稲吉紘実に本当に気品高く、毅然として純度の 高い、贅沢精神を守り通して欲しいと思う。
日本グラフィックデザイン協会 創立者 亀倉雄策

The Spirit of Luxury with a High Grade of Purity
Hiromi Inayoshi, for me, is a designer unlike any I have met before. In his case, the range of works he does goes far beyond what most designers do. He is a creator, and an art director. There are only a few who have such a broad range of skills in Japan. By me saying that I have never encoun- tered anyone like Mr. Inayoshi, I am talking about his essential quality.
When I meet and talk with him and look at his quality of works, I feel his strong palate, or rather, I shall call it his impeccable taste, which makes me feel his quality with a high grade of purity. When I look at his application of works, as if his extraordinary and sophisticated inspirations are breathing under his urban sensitivities, it gives me the realization that, finally, we have this type of designer in Japan.
There have been some criticisms among sensible designers in the U.S., pointing out the deterioration of the quality of art directors. Just recently, Charles Anderson in the U.S. lamented to me that “Art direc- tors these days have become merely money calculators.” Soon it is expected to hap- pen in Japan also. In such a time especially, my wish is for Hiromi Inayoshi to remain elegant with a resolute attitude, and contin- ue to hold the spirit of luxury with a high grade of purity.
Yusaku Kamekura Founder  Japan Graphic Design Association

Motoo Nakanishi

「用・美・個」デザインの申し子   
多くの組織が、CIで個の確立を目指し、 ひとつの帰結がArtへのインボルブへと向かって いく。そんな「個」の時代を代表する人物、 デザイナーが稲吉紘実である。時代の流れとは おかしなものである。かつては応用美術 などと呼ばれ、Artの一応用のように、出現して きたグラフィックデザインが、今ではCIと いう、一大潮流を形成し、企業や都市の存立 意義にまで深くかかわりを持ち始めた。 そして、その先端部分においては、ArtがCIの 中枢に組み込まれ、企業の存立や事業 指針を鮮やかにシンボライズしようとしている。
稲吉紘実はジャン・ミシェル・フォロンを はじめとするアーティストの起用やArtの香りを、 自らのデザインワークの中に組み込み、 「用・美・個」時代のデザインの世界を、実に 自由に、のびのびと描き続けている。 これはもう、まったく鮮烈な衝撃であり、快い 残映である。稲吉紘実がクライアントに 文化度の高い、独創性に満ちたCIの提供という 静謐で確実な一歩を記してから、今日まで 私達は、稲吉紘実のクリエーティブワークから まったく目が離せないのである。情報の良質 転換力とは、げに恐ろしきものである。
PAOS 中西元男

“Functionality, Beauty, Identity”  A Prodigy of Design 
Many organizations are aiming to es- tablish their own identity with CI, and conse- quently, one of the paths would lead to the involvement of Art. Mr. Hiromi Inayoshi, who is a leading designer of the “Iden- tity” era, is at the leading edge of CI design. The flow of the times can be a strange thing. Graphic design used to be called an ap- plied art when it just started to emerge as one of the applications of Art, then it wound up forming a big tide and started impact- ing the significance of existence for corpo- rations and cities. Then, at the forefront of that, Art is integrated into the centrum of CI, clearly symbolizing the existence and direction of corporations.
Hiromi Inayoshi is freely drawing the world of design in the era of “Functionality, Beauty, Identity,” appointing artists like Jean-Michel Folon, and integrating the scent of Art into his own design works. It gives a powerful impact, and a pleasant afterimage. Ever since Mr. Hiromi Inayoshi started to provide highly cultural, originality-packed CI, we cannot take our eyes off of his cre- ative works. The quality presentation of infor- mation is formidably powerful. 
Motoo Nakanishi PAOS

Folon

親愛なる稲吉紘実へ
貴方の仕事が花咲くために、色とりどりの 雨が降りますように。
フォロン

Dear Hiromi Inayoshi,
For further blossoming of your works, may a multicolored shower fall on you.
Jean-Michel Folon

Portrait of Hiromi Inayoshi Illustrated by Folon

Muneaki Kinoshita

信念の求道者として
   日本を代表するグラフィックデザイナーである 稲吉紘実先生の作品集「HIROMI INAYOSHI CI DESIGN」Vol.1を、当社にて手掛けさせて いただけたことは大いなる喜びであります。私は 「ものづくり」に携わる仕事をしたいと、佐川 印刷を創業し、時代の動向を捉えながら、50余年 の道のりを歩んでまいりました。
稲吉先生は、ザ・ニュース・トウディー紙の インタビューで、「マークは絵であり、芸術である」 との信念のもと、グラフィックデザインという 道、芸術という道を突き進んでいるという主旨の お話をされておりました。揺るぎない信念を もち、目標達成のために全力を傾ける、求道者の ような在り様は、私ども佐川印刷と相通ずる ものがあると感じます。
稲吉先生は、本作品集の巻頭メッセージで 「この作品集は、次世代に向けての、CII (Corporate Identity)デザイン、グラフィックデザインの バイブルであり、教科書でもある」と記しておられ ます。製造に当たりましては、当社が長年に わたり培ってきた印刷技術の粋を結集し、バイブル に相応しい仕上がりとなったと確信しており ます。この成果を励みとして、次なる半世紀へ向けて、 印刷のさらなる進化と発展に寄与してまいり たいと願っております。
重ねて稲吉紘実先生の作品集の上梓を心より お喜び申し上げます。
佐川印刷株式会社  代表取締役会長 CEO 木下宗昭

As a seeker of faith
It was a great pleasure for us to work on the printing of HIROMI INAYOSHI CI DESIGN Vol.1, a collection of works produced by the leading Japanese graphic designer Prof. Hiromi Inayoshi. I founded Sagawa Print- ing Co. with the desire to work in the area of “craftsmanship.” We have been on that path for more than fifty years while staying on the cutting edge of current trends.
In Prof. Inayoshi’s interview with The News Today, he talked about the idea that he is advancing his path of graphic design and art based on his conviction that “Mark is a pictorial illustration in the form of Art.” The way he devotes himself to achiev- ing his goal with this unwavering convic- tion, like a seeker of faith, shares much in com- mon with the ways of Sagawa Printing.
Prof. Inayoshi states in the opening message of this collection of works, “This is a bible, and an instructional design book of CI (Corporate Identity) for the next gener- ation.” We are confident that the work- manship we put into finishing this volume is suitable for the printing of this bible, as we have applied the best of our printing tech- nologies that we have cultivated over many years. Encouraged by this achievement, we hope to continue our contribution to the furthering of printing technology toward the next half-century.
Once again, I would like to congratulate Prof. Hiromi Inayoshi on the completion of this collection of his works.
SAGAWA PRINTING CO., LTD. Chairman and CEO Muneaki Kinoshita